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います。ある意味では、非常に崇高な役割と使命を担っているというふうなことであろうかと思うわけでございます。
さて、それでは、芸術を創造する方々をアーチストと言っているわけでございますが、しかし、市町村の行政部局からホールなどに参りまして、いきなり、いわゆるアーチストの方々、「創り人」に触れてびっくりなさる場合もあるんじゃないかなと思っております。
そこで、アーチストというのはどんなキャラクターを持っているのかということを、基礎的認識としてもつことが必要ではなかろうかと思います。
まず、「独創性」ですね。人のやったことはできるだけやらないということですね。まあ、人によりますけれども、私などは、絶対やらないという頑固な確信を持って芸術を創造しております。人がつくり出した芸術価値、芸術様式をこえて、できるだけ自分だけのものをつくり出していこうとする、いわば一種の独創病ですね。
2つ目は「創造性」。とにかく新たにつくりだしていくということですね。何かあるものをパターンとして繰り返すんじゃなくて、全く新しくつくっていくという創造性。
3つ目は「精神性」。えてしてアーチストは、最後になると、もうお金なんかどうでもいい、とにかく自分の芸術価値にすべてをなげうつというところがあります。それが根源になかったらアーチストじゃないんですね。そういう精神性というのがあります。
4つ目は「私人性」というか、公になかなかなじまないんですね。公共性なんかには「ううむ、ちょっと敷居が高くてな」とか「かた苦しくて……」というふうな感情を持っております。そういうようなアーチストの多くが実は崇高な価値を生み出す「創り人」でもあるわけでありますから、この辺はお互いに折れ合って、仲よくつき合うということが非常に重要なわけでございます。
5番目は「自由性」。とにかく自由です。ステージの上では絶対たばこを吸ってはいけませんというルールがあっても、吸わないと仕事にならんという、そういう自由性を持っておりますから、これまた大変ですね。
6つ目は「柔軟性」というか、非常に心性がやわらかいから、きちんとハードにはまった、ルールにはまったような生き方がなかなか難しい場合もある。
7つ目は、芸術というのは割と普遍性が高いものですから、地域でつくっているものでも、すぐれてさえいれば、すぐそれを「世界的」なものへと普遍化できる。宮沢賢治という、岩手県の花巻生まれの、花巻育ちの、花巻で暮らし、花巻で死んだ、あの詩人もまた、その文学は今世界文学として普遍化されているわけです。ですから、彼のようなアーチス

 

 

 

 

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